これは自分が幼い頃に体験した話なんですが。
小学生の頃、家の躾が厳しくて学校から帰ると毎日、トイレ掃除、ペットの散歩や餌やり、洗濯物畳みなど家事の手伝いを祖母に強制的にやらされていました。
その中のひとつに風呂掃除があり、風呂場には浴槽と並ぶように裏庭が見える窓と換気扇が着いていました。
ある日、窓を開けながら掃除をしているとどこからともなく「あーっあーっ」と男の人のような声が聞こえます。
風呂掃除は、父や祖父が帰宅する前にやっておくので、男の人の声がしたとしても、家族のものではありません。
最初は換気扇に風があたり音を発しているのだと思いましたが、それはずっと聞こえるのです。
さては、近所にいる変なおじさん(今思えば精神疾患の方)が裏庭に入り込んで何かやってるな!?と思った私は、浴槽に蓋をしてその上に乗り、窓から顔を出して驚かそうとしました。
しかし、窓の外にはだれもいません。
なのに「あーっ、あーっ、ああああーっ!!!!」という声は浴室に響き渡っているのです。
その時点でもう恐ろしさで震えが止まらなくなっていましたが、それでも良くよく耳をすませると、その声はやはり換気扇から聞こえていました。
昔ながらの古いタイプの換気扇なので紐を引っ張ってそれを止めました。声は止みました。
そう思った瞬間「あーーーーーーー!!!あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃーーーー!!!」
という叫び声が響き渡り、私は悲鳴を上げることも忘れ、浴室を飛び出しました。
居間に居た祖母に泣きつくも、取り合ってもらえず、あげくちゃんと掃除を終わらせて来いと言われる始末。とても戻ることはできず、その後帰宅した母に泣きついて掃除を仕上げてもらいました。母には何も聞こえなかったそうです。
その日は風呂に入る事ができず、それから数日は祖母や母と共に風呂に入ることで、あの恐怖を忘れて行くことにしました。
その後、その声を聞くことはありませんでした。
数年後、家は建て替えられて、新しい綺麗な浴室となり、あの声のする換気も天井に埋め込み式のものとなりました。
もうあの声はしないと思いますが、未だにいつかあの声がするかもしれないという一抹の不安は消えずにいます…